管理会計の中でも、わりと耳にすることが多いCVP分析。多額の投資を伴う、製造業が多い日本企業にも昔から使われてきました。
なお、多額の投資がいらないIT企業の利益率がなぜ大きいのか、これも実は、CVP分析ができればわかるようになります。
あなたは、その内容を正確に知っていますか?
CVP分析とは? その目的は?
CVPは、それぞれ、Cost(原価)、Volume(営業量※)、Price(価格)を指しており、これら三者間の関係を分析したものが、CVP分析となります。
※操業度とも呼ばれ、具体的には、販売数がこちらにあたります。
CVP分析を行う目的は、既存・新規の製品・サービスにつきCost,Volume, Priceをどの程度にすれば、いくらの利益が出るのかを予測することにあります。これを感度分析(sensitive analysis)と呼びます。
また、予測のみならず、結果を分析することで、利益改善にも役立ちます。
詳細は別記事にて説明します。
営業利益=(P-C)*V
今、1個あたりの販売価格をPとし、1個あたりの原価をCとし、販売数をVとしたとき、上記の式が成り立ちます。ここでいう営業利益(Operating Profit)は、その会社の本業から得られる利益と思ってください。
例. 1個あたり50円で製造される消しゴムを100円で20個売った。
⇢営業利益=(100-50)*20=1,000円
ここまでは、簡単ですね。
ただし、以下の仮定が含まれていたことに気付かれましたでしょうか。
①1個あたり販売価格は、いくつ売っても100円のまま変動しない
②1個あたり原価は、いくつ製造しても、50円のまま変動しない
このうち、①に関しては、個人の方が買う分には、ボリュームディスカウントなどほとんどないかと思いますので、今無視します。
次に、②に関しては、通常、企業が製造するので、このままでいいのか検討します。
実は、1個あたりの原価は、製造する数によって変動する場合がほとんどです。特に製造業の場合は、これがあてはまります。
なぜかというと、工場で製造するとして、工場の作業員の方の給料は、製造数に限らず、定時内で製造するとすると、月額変動しません。
また、機械なども、時の経過に伴って減価償却(こちらは別記事で説明)を行うため、製造数に限らず、月額で変動しません。
一方、材料費などは、通常、作る量にあわせて消費する量が変動するため、製造する物の数によって変動します。
ここで、製造数に限らず金額が固定されている原価を、固定費(fixed cost、「以下、FC」)、反対に製造数に通常比例して変動する原価を、変動費(valuable cost、「以下、VC」)と呼びます。
よって、
原価は、FCとVCに区分される。
ここで、先程の営業利益をFCとVCを用いて求めてみると、
営業利益= (P-VC)*V-FC
になります。
仮に、先程の原価が、VCが40円 FCが600円だとすると、
営業利益=(100-40)*20-600=600円となります。
勘のいい方は、固定費が高いと、販売量が減ってしまうと赤字になってしまうのではないかと思われたのではないでしょうか。反対に、すべて変動費であれば、赤字にならずに安定した利益を生むことができると思われたのではないでしょうか。
実は、いずれも正しい理解で、前者の固定費の割合が高い場合を、レバレッジが高く、リスクが高い、後者の固定費の割合が低い場合を、レバレッジが低く、リスクが低い(安全)なビジネスとなります。こちらについては、CVP分析中級編で説明します。
冒頭のIT企業の利益率が高いというのは、機械などに設備する必要がなく、主なコストが人件費(=固定費が少ない)、さらに材料などの変動費が少ないため、営業利益が大きいということになります。
ちなみに、(P-VC)*Volumeの部分を貢献利益(contribution margin)又は限界利益(marginal profit)と呼びます。
まとめると、
ということですね。なお、@は1個あたりという意味で使用しています。
今回はここまで。もっと興味のある方は、中級編(損益分岐点やレバレッジなど)・応用編(固定費の変動費化など)もしくは、こちら。