MBO-上場メリット・デメリット

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 定義

 マネジメント・バイアウト(Management Buy Out)とは、経営者自らが、既存株主より自社株式を購入したり、会社の事業部門のトップが事業譲渡を受けたりして、オーナー経営者として独立することをいいます。前者の場合には、株式の非上場化を伴うこともあります。

 非上場化-上場コストの節約や敵対的買収の防衛策

 会社としての信頼向上に伴う機動的な資金調達、与信枠の引上のみならず、住宅ローンや転職のしやすさといった従業員にもプラスの影響を及ぼす株式公開(IPO)ですが、メリットばかりではありません。

 これらのメリットを得るために、必要な対価を支払っているのです。例えば、高額な上場及び上場維持コスト株主への業績等に対する説明責任(Accountability)が求められます。

 MBOとは、これらのコストを削減して、長期的な利益を追求するために実施されることがほとんどです。なお、例外として、業績が好調なのに、株価が安く、敵対的買収(Take Over BidもしくはTender Offer Bid「TOB」)の防衛のために、行う場合もあります。

 上場コストとは? 金銭コストだけじゃない。管理コストがかかります。

 監査コスト(金銭コスト)

 まず、上場には、監査法人の監査が最低2年間(一般に「N-2」と呼ばれます。)必要です。規模にもよりますが、Big4と呼ばれる、新日本・トーマツ・あずさ・あらたの監査法人であれば、15M〜30M程度/年は、最低かかると思ったほうがいいです。上場後も当然監査及び四半期レビュー契約が必要となり、さらに報酬が増額されることも多いです。何もBig4でなくてもいいのではないかといった疑問もお持ちの方がいらっしゃるかと思いますが、上場審査に耐えうる知見を十分に持った監査法人は、Big4以外だと数えるほどしかないと思います。

 実際、海外の子会社を所有しているもしくは、所有する予定がある、かつ国際会計基準(IFRS)や米国会計基準(US-GAAP)など、海外の監査人に監査をお願いする(監査指示書(Instruction)を送付する)ためのコネクションを持っている法人もBig4以外だとほとんどないため、結局、海外子会社をBig4に見てもらうなどになってしまいます。

 結果として、90社の上場を果たした2018年は、次の通りとなっており、およそ8割をBig3(新日本、あずさ、トーマツ)が占めていることがわかります。

2018年 IPO監査法人のシェア

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は IPO-1024x529.png です出典:KPMG あずさ監査法人 2018年IPOの動向についてhttps://home.kpmg/jp/ja/home/insights/2019/01/ipo-report-201812.html

 信託銀行への手数料(金銭コスト)

 会社法の改正により、非上場会社でも原則、株券が不発行となり、電子での管理となりましたが、上場会社になると基準日を設けて、株主の権利を確定する必要があります。この株主の権利を確定して、その株主に対して、議決権や配当を受け取る権利を把握するのですが、これを信託銀行へ委託する必要があります。こちらは、株式の発行数にもよりますが、年間数千万円にものぼる場合があります。

 主幹事証券会社への手数料(金銭コスト)

 上場するためには、上場審査、株式の売出し、アドバイス等を証券会社に委託することによる費用がかかります。こちらの費用も高額になってきます。

 厳密な内部統制(管理コスト)

 会社法上の大会社(資本金5億円以上、もしくは、負債200億円以上)であれば、内部統制(J-SOX)が求められますが、上場すると金商法監査で内部統制監査というものが必要になります。こちらは、上場会社のような、市場に大きな影響を与える会社は、財務諸表の数値に関わる内部統制をしっかり整備して運用することで、誤謬や不正を防いでくださいという趣旨で導入されました。こちらに関しても上場後すぐは、外部の監査法人の監査は免除されますが、整備運用の責任は会社側にあり、上場時には、監査法人以外の東証等の上場審査に必要です。

 内部統制とは、様々な目的をもって業務遂行上必要な牽制機能として設けられる制度です。このうち、財務報告に係る内部統制のみが、内部統制監査の対象です。

 具体例を一つあげると、出納を行う人と、経理処理をする人が同一である、もしくは、実質的に、同一の人が行ったのと変わらないことにできる状況であれば、横領などがあったとしても、帳簿上の操作で発見することが難しくなります。そのため、あらかじめ、出納を行う人と経理処理をする人、さらにそれぞれの業務を行う人と承認する人を別々に配置する必要があります。また、一つの取引を行うにも、牽制がとれたフローを経る必要があるので、取引スピードや意思決定スピードは、上場前と比べて、通常遅くなります。

 このような背景から、上場準備の段階で、管理部門の人員が増えざるを得なくなります。また、これらの統制を図や文字で書き起こす必要があり(フローチャート、業務記述書、リスクコントロール・マトリクスを3点セットと呼びます。)、それらの業務に長けた公認会計士等のアドバイザリーを業務委託契約などで雇う必要があります。

 株主への説明責任(Accountability、管理コスト)

 非上場会社でも、会社法が想定しているのは、オーナーである株主(出資者)が、経営者に経営を委任(delegate)することによって、所有と経営が分離している状態です。しかしながら、非上場会社の場合、通常、株式の譲渡に譲渡制限がかかっており、経営者以外に出資を行う人がいないため、オーナーと経営者が一致しています。そのため、株主と経営者の利益が一致しており、会社の経営で得られた利益も、損失も同じ人に返ってきます。そのため、自己で責任を取れる範囲であれば、自由に経営ができます。

 一方、上場会社では、株式が公に売買されており、経営と株主が原則として一致せず、利害関係者に与える影響が大きいです。利害関係者が多く、直接意思決定に関わることができずに、損益のインパクトは直接利害関係者に返ってくるため、当然、会社が使う費用は、合理的なものでなければいけません。少なくとも、合理的なリターンが意思決定時において見込めるもの、またそれを説明できるものでないといけないのです。この点を意識できるかが、上場会社と非上場会社の役員になれるかの絶対的な違いです。

 株主の利益-配当(income gain)もしくは株式売却(capital gain) (管理コスト)

 株主が利益を得る方法は、配当を得るか、株を売却する(空売り含む)かの2点です(株主優待は通常僅少なので除く)。非常にシンプルで、前者は、インカム・ゲイン(income gain)、後者は、キャピタル・ゲイン(capital gain)と呼ばれます。

 経済的利益を目的に出資している株主は、これらいずれかの実施を短期的に得られる企業に対して投資を行います。ゆえに、より利回りの高い会社があれば、手元の株を売却し、そちらの株を買うというのが合理的な意思決定となります。

 このプレッシャーが、短期的な利益を追求する粉飾決算や、長期的な利益を見越したプロジェクトへの投資の取りやめを助長する可能性があります。

 後者に対しては、利害関係者への適切な説明を行う事が必要なのですが、投資をするぐらいなら今の利益を株主へ配当として還元してほしいという株主の利益と相反します。 

 MBOの手法-通常、PEファンド等と組んで行う

 通常、MBOを行う企業の株価は、割安とはいえ、経営者自身が株式を購入するほどの資金を用意できません。そのため、PEファンド等と組んで、ファンドの投資(エクティティ)と金融機関からの借入(デット)を通じて資金を調達して行います。

 ここで、借入を用いるのは、PEファンド等のExitをしやすくするためです。企業価値は、成長企業の場合、Discount Cash Flow(DCF)法による事業価値+非事業用資産-有利子負債で求めることが多いです。買収時に、一部を借入で調達することにより、そのままの事業成績であっても、返済により、借入を少なくしていくと、Exit時の企業価値が上昇します。そのため、低リスクで、リターンを回収することが可能となります。ちなみに、非上場になった後の売却は、類似企業比較法などのマルチプル方式で価値を算定します。

 まとめ

 IPOを目指して起業される方、もしくは、準備フェーズにある会社の経営者の皆様も、よくよく検討されたうえで、上場を目指して頂ければと思います。これらのデメリットは序の口で、継続的な適時開示制度など不自由に感じることも多いと思います。

 なお、実際に、本格的に準備されている会社さんのうち、通過率は50%程度かと思いますので過酷な道のりです。それでも、社会に与える影響は大きいので、覚悟を決めて目指す方が増えるのは大賛成です。

 さらに詳しく知りたい方はこちら。

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